Smiley face
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上田春雨さん

 3月下旬の昼過ぎ。子どもの通院や仕事であたふたしていた時だった。全国紙の記者、上田春雨さん(37)のもとに、一通のメールが届いた。

 「隠し玉作品として(小説を)刊行させていただきたくご連絡を差し上げました」

 大手出版社・宝島社の編集者からだった。同社は公募新人賞「このミステリーがすごい!」大賞を主催している。上田さんは、作家デビューと賞金1200万円を目指していたが、大賞には届かず。次の賞レースに向けて、小説を書いていた矢先、編集者の推薦で、本を出すことが決まった。

 ただ、信じられなかった。編集者に実際会っても、刊行に向けた打ち合わせをしても、「うそだと思った」。半信半疑で応募作を推敲(すいこう)し、「呪詛(じゅそ)を受信しました」を7月に刊行した。

 新聞記者と作家の顔をあわせ持つ。毎晩9時ごろに子どもを寝かしつける。それから、家事などを片付け、深夜1~4時に小説を書く生活を送っている。「深夜の狂気が結実しました」

 ハードな毎日に大変なのでは…

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