地元のイベント会場で上映された、埼玉県飯能市立名栗小学校を舞台とした映画の一場面。児童や教職員が出演している=2025年6月28日、飯能市下名栗、米沢信義撮影

 児童数49人の埼玉県飯能市立名栗小学校の存続を願い、同校のPTAが児童らが出演するミュージカル仕立てのPR映画を自前で制作した。保護者の中にプロの演出家、映像作家、脚本家、ミュージカル俳優がそろい、「本気を出した」という18分の作品だ。

 作品名は「Small is Beautiful ~ちいさな小学校と、ちいさな願いの物語~」。冒頭では、県外から引っ越してきた女の子の物憂げな表情がアップになる。一方、名栗小の児童は転校生のニュースに大はしゃぎ。川遊びや昆虫採集、山歩きなどの授業場面を交えながら歌と踊りで歓迎。両親は安堵(あんど)の表情を浮かべる。

 名栗小は旧名栗村地域の唯一の小学校。少人数の良さを生かした教育で知られ、小規模特認校制度を利用して学区外から通う児童が約4割いる。さらに自然豊かな環境を求め、市外から「子育て移住」した家庭の児童が約4割にのぼるのも特徴だ。

 だが、少子化で地元の名栗中学校が2021年に閉校し、「次は小学校も」と地元では危機感が広がっていた。

 PR映画のアイデアは、元ミュージカル俳優で旅館女将(おかみ)の柏木由香さん(51)らPTAメンバーが松尾みのぶ校長に提案し、昨年春から動き出した。監督はテレビドラマなどの演出を手がけてきた瀬野尾一さん(38)。数年前に東京都からやってきた「子育て移住組」だ。「PTAに移住者の映像作家も脚本家もいるので、仕事はスムーズだった」という。

 準主役となる転校生の父親役には、同じくPTA仲間で劇団四季でも活躍したミュージカル俳優の阿部よしつぐさん(46)を起用。撮影は昨年秋から始まり、教職員や児童がオリジナル曲に合わせて歌や演技に挑戦し、地域住民もエキストラとして参加した。

 瀬野尾監督の演技指導は「子どもの中から自然に出てくるものを大切にした」。6年生の南雲心さんは「緊張して何度かNGが出たけど、リラックスしたらうまくできた」と笑顔で振り返る。

 松尾校長は「保護者と学校と地域が協力したらすごい作品ができた。映画を見て入学希望者が増えるかもしれないが、1人ひとりを大切にしていきたい」と話す。

 映画は6月28日に地元のイベントで初上映され、YouTubeでも試行的に公開されている。以下のURL(https://youtu.be/2mMASo9VMs0?si=krYUte7tKNtlqAOM)で視聴できる。

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