がん患者の緩和ケアをきっかけに「社会的処方を文化に」と訴える西智弘さん=川崎市中原区の「暮らしの保健室」

 社会や家族などのつながりを失い、孤立したり孤独を感じたりした人たちに何かできないか。こうした社会的孤立に向き合う方法の一つとして、地域での人のつながりを大切にする「社会的処方」が注目されている。川崎市内の病院に勤める医師の西智弘さん(44)は、がん患者への治療や緩和ケアをきっかけに社会的処方の大切さを訴え、実践してきた。孤立や孤独に直面する人たちへの処方箋(せん)とは何かを尋ねた。

白黒だった日常がカラーに

 多くの会社や店舗が休みに入る年末年始は家族や親しい人たちと過ごすことが多くなり、そのつながりが薄い人たちは孤独を感じやすく、孤立しやすい時期でもある。それを乗り越え、新しい年に向けてどうしたらいいのだろうか。

 「自分が暮らしているまちに興味を持つ。どんな人がいて、どんな団体が何をしているのか。一歩踏み出してみてはどうでしょう。入り口は何でもいい。白黒だった日常にちょっと色が入って、広がっていく。そんな生活になれば」

 2024年3月、「みんなの社会的処方 人のつながりで元気になれる地域をつくる」(編著)を出版した。

 社会的処方とは「薬を処方することで患者さんの問題を解決するのではなく、『地域とのつながり』を処方することで問題を解決すること」だという。人と人のつながりを利用し、人を元気にしようという試みだ。

 具体的にどのようにつながっていけばいいのだろうか。

 まず、その人がどんな人生を歩み、何をしたい、どう生きていきたいと思っているかを聞くことから始める。

その人らしさを大切に

 それぞれの人間性を尊重し、「こんな活動があるけど、興味ある?」と呼びかけ、「おもしろそうだから顔を出してみようかな」と自主的に選んでもらう。

 たとえば、カフェを開くのが夢だとわかったら「(地域住民らが交流する)コミュニティーバーを昼間に借りれば、1日カフェ店長ができるかも」と紹介する。

 店長を体験してやる気が起き、何回かカフェを開くうちに常連さんもできて、元気になるかもしれない。

 大切なのは、その人らしさを…

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