段ボールベッドの設置方法を教わる生徒たち=2025年5月9日、静岡県御殿場市萩原、御殿場中学校提供

 静岡県御殿場市の御殿場中学校は2年生の宿泊学習で、学校を使った「避難所体験」を初めて実施する。生徒たちは30日に自ら避難所を設営し、2日間を過ごす。事前に専門家から学んで、食事や入浴など全てのプログラムを企画した。消防団や陸上自衛隊も協力する本格的な内容となる。

 同校の宿泊学習は例年、東京での職業体験だった。教員たちは「正解がない時代、職業を選択するとも限らない。自ら挑戦して楽しむ力を養ってほしい」と考え、今年は生徒が自主的に取り組む行事を構想。会場は、制約なく使える学校に定めた。

 行事名を「ZERO」と名付け、生徒が4月に実行委員会を作って準備を開始。学校が市の避難所に指定されていることもあり、避難所体験に決めた。困難な環境でも「わくわく」できるような運営を考えたという。

 副実行委員長の小松功乃丞(こうのすけ)さんは「自分の学校だけど普段できないことをして、みんなの意外な一面も見て、仲を深めあいたい」と語る。

 避難所は体育館と武道場などを使う。設営方法を専門家から学び、段ボールベッドや毛布などを2年生全員の希望と健康面を考慮して割り振る。男女の動線も分け、安心できる環境を整えた。

 朝食はクラスごとに自炊する。冷蔵庫を使わない献立として、缶詰を使ったサンドイッチなどを考えた。避難生活でも楽しい時間を持てるよう、多彩なレクリエーションを企画。けが人を身近な道具を使って搬送する方法も実演する予定だ。

 入浴は陸自が協力して、被災地でも展開してきた野外入浴の装備を校内に設営する。大浴場になじみがないことなどから入浴を希望しない生徒が多くいた。実行委が「今回の目的は、現場を見て被災者支援のありがたさを知ることだ」と伝えると、入浴参加者が増えたという。調べると、ドライヤーもあり、服を着たままの足湯といった、いろんな入浴方法があることもわかった。

 小林徹校長は「防災に定まった答えはなく、大人になってもずっと続く問題。仲間や支えてくれる社会のことを考え、体験を生かしていってほしい」と話している。

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