コンクールに向け、「全部員」で合奏練習にうちこむ福島県立勿来工業高校吹奏楽部。音楽室が広く見える=2025年7月18日、福島県いわき市植田町、西堀岳路撮影

 今年4月の新入部員登録の日、福島県立勿来工業高校(いわき市)吹奏楽部が練習拠点にしている音楽室に、1年生は誰も来なかった。待ちわびていた部長で3年生の尾形奈那海さん(18)は、顧問の横山裕理教諭(38)に尋ねた。「これまで1年生が入らなかったことってあったんですか」。「そうねえ、なかったわね」。ぼろぼろ涙があふれ出た。何かが崩れ落ちたような気がした。

 部員数の減少や教員の働き方改革を背景に、各校では部活動の統廃合を進める。同校では、新入生の入部がゼロだった部は翌春以降の部員募集ができないとした。それは部の消滅を意味する。尾形さんは1年生の教室を回って、手当たり次第に声をかけた。何人かが事前見学に来た。この日も、「あのうち1人くらいは来てくれるだろうと思っていた」。だが……吹奏楽部にとっては「休部宣告」に等しかった。

 かつて勿来工は数十人の部員を擁し、全国大会に出場したこともある。だが4、5年前から部員が10人を割り込み、県大会出場をかけた地区予選も突破できないでいた。

 尾形さんは「県大会に進んで…

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