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いじめを認定した調査報告書を大阪市教育委員会の松田淳至・総務部長(右)に手渡す第三者委員会の曽我智史・部会長=2025年5月12日、大阪市役所、松浦祥子撮影

 大阪市の中学校で2023年8月に当時中学3年の男子生徒が自死したことを受け、第三者委員会が12日、報告書を公表した。部活動の同級生から仲間はずれにされるなど、45件のいじめを受けたと認定。「自死に至ったのは部内のいじめが最大の要因」と結論づけた。

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見た目や言動からかわれ 打ち上げから「ハブられた」

 報告書によると、水泳部に所属していた男子生徒は1年生の時から、見た目や言動を1人の同級生の部員にからかわれるなどのいじめを受けた。3年生になると、練習中に水をかけられるなど、いじめの回数が増え、この部員に忖度(そんたく)して他の部員らも男子生徒を無視するなどした。部員7人による大会後の打ち上げでは、男子生徒は計画段階から意図的に排除された。それを知った男子生徒は別の生徒に「ハブられた」「病んだ」などとLINEでメッセージを送信し、同日、自死した。

「既読無視」もいじめに該当と認定

 第三者委は、打ち上げに呼ばないといういじめが男子生徒に及ぼした精神的打撃は甚大だったとした。また、45件のいじめのうち大半について、いじめた側や周囲が「いじり」や「だるがらみ(しつこい絡み)」だと捉えていた点を指摘。「いじり」や無視が続いていた状況を踏まえると、部員が男子生徒のインスタグラムのフォローを外した行為や、男子生徒から送られてきたLINEのメッセージを読んだ上で返信しなかった「既読無視」の行為もいじめに該当すると認定した。

 第三者委は、水泳部の顧問が、部員の行為を「いじっているだけ」と認識し、いじめとして対応しなかったことが深刻化を招いたとした。提言では、「いじり」について、笑いと捉える地域文化的背景があるとした上で、「加害側や周囲にとっては微細と思えても、被害側にすれば明示的でない攻撃であるがゆえに抵抗・反論しがたく、長期間にわたって蓄積されていくストレスがいかに甚大であるか想像に難くない」と指摘した。調査にあたった弁護士の曽我智史・部会長は市教委に報告書を手渡し、「場を和ませる行為として『いじり』を捉え、問題視しない空気感があった。いじりの対象となる生徒が犠牲にされていることを認識し、学校として見逃さない仕組み作りが必要だ」と要望した。

遺族「子どもたちには、加害者にも、被害者にもなってほしくない」

 男子生徒の両親は同日、弁護士を通じて「心優しい我が子でした。息子が、いじめでこれほど傷ついていたかと思うと、本当にやりきれない。二度と同じ思いをする児童生徒、保護者がでないことを切に願います。子どもたちには、加害者にも、被害者にもなってほしくない。今回の報告書が教訓として幅広く活用されることを期待します」などとするコメントを発表した。

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