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 世間には誤解がある。日本学術会議は研究や教育をしている大学のような組織だと思われているが、そうではない。世界や社会が直面している問題を探り、多様な研究分野から解決策を議論して提言をする「会議体」だ。

 ところが新法では学術会議の活動を「業務」として、大学と同じように6年の中期計画、目標を立て、自己点検・評価するという。会議体に中期計画を出させるのは間違っている。国会に出せとは言わないでしょう。

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総合地球環境学研究所の山極寿一所長

 次の誤解。法人化で、政府から独立して首相の会員任命はなくなり、自由裁量で決められ、自治が守られるというが、まったく逆だ。これまでは会員を研究者の推薦で選び、形式的に首相が任命した。新法では、首相指名の外部識者が新会員の選定プロセスにかかわるので、任命以前に政府の圧力がかかる。

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 さらに首相任命の監事が業務と財務を全面的に監査し、不正を監視する。不正の行為は定義していないが、首相に報告し、首相は是正を求めることができる。処罰規定もある。たとえば政府の政策に反する意見が出そうなら監事は報告するのか。罰則を意識して自由な議論が封じられ、戦前と似た状況になりかねない。

 学術会議の自己評価に対して…

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