災害時や宇宙での生活を食事面で支えようと、名古屋女子大学(名古屋市瑞穂区、4月から名古屋葵大学)は、災害食・宇宙食開発プロジェクトを立ち上げ、一般から募集した宇宙食に適した「きくらげ・味噌(みそ)を使ったレシピコンテスト」の入賞作品を発表した。応募作の一部は、常温の長期保存ができるよう加工し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に提案する。
コンテストには全国から141点の応募があった。最優秀賞には、山本由美さんの「きくらげ味噌のカレーナッツボウル」、優秀賞には、愛知県立瑞陵高校2年の久米風香さんの「きくらげ入り八丁味噌羊羹(ようかん)」と、名古屋女子大学健康栄養学科2年の西田咲希奈さんの「きくらげ入り!名古屋風ミートパイ」が選ばれた。
同大学では、営農型の太陽光発電設備を使ってキクラゲの栽培にも取り組んでおり、公募したレシピの食材に選ばれた。国産の乾燥キクラゲは、骨の健康を維持するために欠かせないビタミンDを豊富に含む。人間は太陽の光(紫外線)を浴びることで皮膚表面でビタミンDを生成しているが、日光を浴びられない宇宙飛行士は食事から摂取する必要がある。
また味噌は、腸内環境の改善や消化機能、免疫力の向上などの効果があるとされる。審査委員で健康科学部の片山直美教授は、「二つとも災害時や宇宙での健康維持に適した食材」と話す。
最優秀賞の「カレーナッツボウル」は、乾燥キクラゲや味噌パウダーにナッツやデーツ、オートミール、はちみつを加え、甘めのカレー味に仕上げた。非常時でもおいしく栄養補給できるエナジーボウルで、お湯やミルクをかければおかゆ風にもなるという。
優秀賞のひとつの「羊羹」は、八丁味噌を入れて甘さに塩味とうまみがプラス。キクラゲを加えてコリコリとした食感を生み出した。レシピを考案した久米さんは「味噌とキクラゲの組み合わせが面白かった。キクラゲの食感がいいアクセントになっている」と胸を張る。
「ミートパイ」は、大豆を干しシイタケの出し汁で味噌と一緒に炊きあげてうまみを出した。キクラゲの食感、名古屋名物の味噌を存分に味わえる一品で、肉の代わりに大豆を使って誰でも食べられる工夫も。開発した西田さんは「一口で食べられるのでおやつにもおかずにも最適。宇宙で食べてもらえればうれしい」と話す。
レシピは、同大学ヘルスケア研究所でレトルトや真空パックなどの方法で宇宙食に加工し、JAXAに提案する。地元の大手食品メーカーと協力してプロジェクトを進め、災害時の非常食への活用も視野に入れている。
名古屋女子大では2004年から「宇宙食」について研究をスタート。片山教授は、2020年3月に宇宙飛行士の野口聡一さんが国際宇宙ステーションで取り組んだ「宇宙でハーブを育てる」実験に参加し、今回のプロジェクトではJAXAとの橋渡し役を務める。