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プログラミングの授業を受ける宇都宮大「データサイエンス経営学部」の学生ら=2024年5月24日午前11時13分、宇都宮市峰町、津布楽洋一撮影

 宇都宮大学で8年ぶりの新学部となる「データサイエンス経営学部」が今年度から始動している。データの価値が向上した社会のニーズに即した実践的な学部として、地域の期待も大きい。長谷川光司学部長に新学部の展望などを聞いた。

 「数理、データサイエンス、AI(人工知能)の教育は、現代の読み書きそろばんです」。長谷川学部長は設置の背景を明確に説明した。

 これまでの宇都宮大には、高校生の進学分野で大きな割合を占める商学、経営学、経済学の分野の教育組織がなかった。カバーできていたのは、県立高の生徒が希望する進学分野の35・8%だったという。「これでは優秀な人材が東京の方に出て行ってしまう」。社会科学(商学や経済学関係)系の学部ができれば51・2%と、半分以上はカバーできるようになる。

 もうひとつは、ビッグデータを使いこなして即座に判断ができるような人材への需要の高まりだ。日本が世界から後れを取っている分野でもあり、力を入れなければならないという意識が全国的に高まってきていた。

 宇都宮大は2021年ごろから設立に向けて動き始め、昨年度末に初めての入試を実施し、今春、59人の学生を迎えてスタートした。

 学生の育成には三つの力を重視している。「データサイエンス力」は、データから価値のある情報を抽出し、分析をする力。「マネジメント力」は課題と解決策を見つけ出す力。そして特徴的なのが「社会実装力」。データサイエンスと経営学の両方の知識や技術を、実社会の意思決定や価値創出に活用する力だ。

 この学部は理系なのか、文系なのか。長谷川学部長は「文理複眼」という言葉で説明する。データサイエンスと経営を両輪として、学生は2年生の後期から、どちらの専門性を深めていくか、進む方向を選択する。目標のひとつとして「経営が分かるデータサイエンティスト」と「データが読める経営者」を育てていくことを掲げる。

 今後は大学院やデータサイエンス総合教育研究センター(仮称)の検討を進めている。社会が経験と勘による旧来型の経営から、データをみて判断する経営へシフトしていくなかで、新学部が地域の要望に応えられるか、注目が高まっている。(津布楽洋一)

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