文星芸大付―宇都宮工 宇都宮工五回、黒崎が生還して4点目を挙げる=2024年10月5日、宇都宮清原球場、津布楽洋一撮影

 第77回秋季栃木県高校野球大会(県高野連主催)は5日、宇都宮市の清原球場で準決勝2試合が行われた。宇都宮工と佐野日大が決勝に勝ち進み、上位2校に与えられる関東大会への出場権を得た。5―0で文星芸大付を破った宇都宮工は、20年ぶり18回目、県大会3連覇をめざしていた作新学院を4―2で下した佐野日大は6年ぶり13回目の関東大会出場となる。県大会の決勝は6日、同球場で行われる。関東大会は26日、神奈川県で開幕する。同大会の成績は来春の選抜大会の選考材料になる。

 強豪私学の文星芸大付を退けた宇都宮工の選手たちは、抱き合ったり腕を突き上げたりして、優勝したかのように喜んだ。大森一之監督は「心の起伏がない野球をやれていた」と、常に冷静なプレーを見せた選手たちをたたえた。

 安打数は相手の9本に対して5本のみ。だが、バントと積極的な走塁などで、好機を手堅く得点に結びつけた。2安打2打点の活躍を見せた田島駿(1年)は「鋭い打球で守備の間を抜く」という持ち味の打撃が光った。

 守りでは初回、満塁の危機に。それでもエースの横山健(2年)が三振でピンチを乗り越えると、その後の守りは2併殺を奪うなど、相手に得点を許さなかった。横山は「打たれてもいいと、チームを信じて投げた。自分に有利なカウントに持っていけたのが良かった」と満足そうだった。

 全国選手権の準優勝をはじめ、春夏合わせて9回の甲子園出場を誇る伝統校。2002年の選抜大会出場のあとは強豪私立に苦戦し、大舞台から遠ざかってきたが、主将の石沢蓮雅(2年)は「相手が私立であっても関係はない」ときっぱり。

 20年ぶりの関東大会出場を決めた古豪が、完全復活へ大きな一歩を踏み出した。(津布楽洋一)

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 作新学院の3連覇を阻んだ佐野日大は、好守に気迫のこもったプレーを見せた。これまで選手たちは髪を伸ばしていたが、新チームは「全員で気合を入れよう」(主将の桜井剛志)と、自主的に丸刈りにしたという。3打点を挙げた田崎瑛大(2年)は「後ろにつなぐコンパクトな打撃を心がけた」と笑顔。エースの洲永俊輔(2年)も「打たれないコースを意識した」と137球の完投勝利に言葉を弾ませた。

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 県大会3連覇まであと2勝――。先制されても追いつくなど作新学院らしい粘りはみせたが、相手に一歩及ばなかった。

 2点を追う五回、1番葭葉慶治(2年)の好走塁や3番沢村友真(1年)の内野安打で同点に追いつき、試合の流れを引き寄せたかにみえた。しかし、六回以降は佐野日大の先発洲永俊輔(2年)のキレのある球に苦しみ、得点できずに終わった。

 作新の先発斎藤奨真(2年)も好投した。だが、七回に2点適時二塁打を浴びて勝ち越しを許した。斎藤は「2死から四球を出してしまった。あそこで決めなければいけなかったのに力んだ」と唇をかんだ。

 昨年は2連覇を果たし、関東大会で優勝。続く明治神宮大会で準優勝し、今年春の選抜大会には2年連続で出場した。プレッシャーはなかったかと問われた主将の柳沼翔(2年)は「目の前の一戦一戦に集中していこうとチームで話していた」。新チームとして悔しいスタートとなったが、「自分たちを見つめ直す時間が増えた。夏の甲子園に向けて何が足りないのか課題はたくさんあるので」と前を向いた。(高橋淳)

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 文星芸大付は一回に満塁、二回にも三塁にまで走者を進めたが、得点につながらなかった。「勝てば関東といった思いが子供たちにあったのでは」と高根沢力監督。「鍛え直して春、夏へと仕上げたい」

 準々決勝まで20イニング投げて1失点だった先発の津久井雷仁(らいと)(1年)も「関東大会という先を見すぎてしまった」とし、「どの球場でも通用する制球力を身につけ、自分の守備力も牽制も鍛えなければ」と課題を挙げた。(高橋淳)

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