(25日、第97回選抜高校野球大会2回戦、聖光学院7―4早稲田実)
聖光学院の二塁手、細谷丈選手(3年)は二回、先頭打者の速い打球を取り損ねた。シングルキャッチを試みたが、球のバウンドとタイミングが合わずはじいてしまった。
初回に先制された矢先。堅守の聖光学院が今大会初めて記録した失策で、いやな流れになりかけた。だが、斎藤智也監督が「身体能力の高さはチーム随一」と評する守備の要は、引きずらない。「ここで自分だけ落ち込んでいたら、頑張っている大嶋(哲平投手)はじめチームに迷惑をかける。精神面でも自分が引っ張っていかなきゃ」
ミスを挽回(ばんかい)する場面はすぐに来た。三回2死から、相手は守備の乱れに乗じて追加点を挙げる。なおも続くピンチ。適時二塁打のボールを中継で素早く三塁に送り、走者をタッチアウトにした。立ち上がりから苦しむマウンドの大嶋を助けるプレー。自身も吹っ切れた。
同点の五回は安打性の打球2本にくらいつき、いずれも好捕。「守備からリズムを作る」聖光野球を体現し、チームをリズムに乗せた。
背番号4の細谷だが、1回戦はベンチスタート。試合への出場が約束されているわけではない。その分、「やってやる」と臨んだ。
この日は七回2死二塁の場面で外角のボールを狙い澄まし、右前に適時打。3安打1打点と打撃でも貢献した。「スタメン競争は激しいけど、次も試合に出て、自分のところに来たボールには全部くらいつき、勝つ」。高揚した顔を引き締め、そう宣言した。