日本を取り巻く安全保障環境が悪化する中、岸田文雄首相は「ハト派」の伝統をもつ派閥出身ながらも、戦後日本の安全保障政策の大転換を図った安倍晋三元首相の路線を継承し、防衛力強化や日米同盟深化を進めた。政府内では「安倍元首相以上」の転換を実現したという見方もある。
首相は14日の会見で「国際社会の複雑化・困難化に対応し防衛力を抜本的に強化した」と強調し、「大きな成果を上げたと自負をしている」と語った。実際、首相は政権発足直後から厳しい安保環境に直面した。2022年2月にロシアがウクライナ侵攻。中国の習近平(シーチンピン)国家主席が武力行使を否定せず台湾有事の現実味が増す中、首相は「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と訴え、秋葉剛男・国家安全保障局長を右腕に防衛力強化に乗り出した。
最大の実績が「岸田政権の金字塔」(防衛省幹部)と言われる安保関連3文書改定だ。防衛費を27年度には対国内総生産(GDP)比2%とする方針を決め、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を宣言。日米同盟で自衛隊は「盾」、米軍は「矛」という役割分担だったが、自衛隊も「矛」の能力をもつという安保政策の大転換だった。
戦後憲法の平和主義の下で武…