安倍晋三元首相が銃撃され、死去してから、3度目の夏を迎えた。元自民党副総裁の高村正彦氏(83)に、安倍氏とのゆかりや安倍政権の舞台裏、退陣後の安倍氏の胸中について聞いた。
――安倍氏は1993年に初当選しました。
初当選のあいさつで、安倍氏は「平議員の時には心情を思いのまま発言させてもらいます。しかるべき立場になったら、国益を考えて、バランスのとれた発言をしたい」と言った。強烈な印象を持った。
安倍氏は、祖父が首相。父も首相になると思われていたが、病気で無念のうちに亡くなった。「しかるべき立場」というのは首相しかない。初めてあいさつに来て、そんなことを言うか?
――中国の江沢民国家主席(当時)が98年に来日しました。
安倍氏らが「韓国の金大中(キムデジュン)大統領来日時(の日韓共同宣言)みたいに文書で謝ることはしないでくれ」と言ってきた。当時外相だった私が「文書で謝ることはない」と答えると、安倍氏は「小渕(恵三)首相は危ない」と話していた。
小泉首相から要職に起用されたわけ
――安倍氏は小泉純一郎内閣で要職に起用されました。なぜでしょう。
小泉氏は派閥人間だった。清…