定額減税について「タイムコストが膨大」と話す山田典正税理士=2024年5月30日午後6時13分、東京都墨田区、中野浩至撮影

 6月から始まる定額減税に対し、税理士からも反発の声が強い。国が決めた複雑な計算を強いられるだけでなく、課税の原則である公平性を害しているからという。どういうことなのか。早くから制度に疑義を唱えていた山田典正税理士に話を聞いた。

 ――定額減税とはどのような制度なのでしょうか。

 「本人」+「扶養している家族」に対して1人当たり年額4万円(所得税3万円、住民税1万円)分を減税する制度です。会社としては、毎月の給与計算と年末調整の対応が必要になります。

 所得税については6月の給与計算で天引きされる所得税から控除し、控除しきれなければ余った控除分を翌月以降に繰り越します。

 住民税は、控除した後の金額を11分割して今年の7月分から来年5月分として給与から天引きする計算になります。

 計算の手間を伴う定額控除ですが、こうした負担を企業や税理士が押しつけられるだけでなく、納税者にも「不公平」が生じるおそれがあると山田さんは指摘します。

なぜ企業や税理士が頑張らないと……

 ――計算が複雑そうです。

 わたしたち税理士や、企業の管理部門は、定額減税に対応するために、まずは制度を詳しく調べて、作業フローを考え、抽象化した資料を作り、さらに、クライアントや全社員が理解できるように説明しなければなりません。

 また、社員が抱える個別の事情について情報を集めたり、質問に答えたりしなければなりません。こうしたタイムコストは膨大にかかります。

 理解度は人によって大きく異なります。ただ、「なんでこんなことをしないといけないんだ」とクライアントから怒りを向けられても税理士の立場ではどうしようもありません。なぜ国がつくったわかりづらい制度の説明を企業や税理士が頑張って行わなければならないのでしょうか。

退職金を受け取ると…?

 ――複雑さゆえに不公平なことが起きないか、懸念されます。

 夫婦共働きの場合、どちらが…

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