コロナ禍を経て、6年ぶりに皇居に国賓がやってきた。ブラジルのルラ大統領夫妻を歓迎する行事では、これまで用いてきた日本の曲を相手国にちなむ曲に変更したり、宮中晩餐(ばんさん)ではブラジル側の要望を受け入れて初めてドレスコードを「平服」としたりするなど、天皇、皇后両陛下はきめ細かな心配りで大統領夫妻をもてなす。
宮殿・東庭での歓迎行事で、両陛下と大統領夫妻が互いの随員らにあいさつをする場面では、これまでの「さくらさくら」「お江戸日本橋」ではなく、「ブラジル」「オ・アブリ・アラス」が演奏された。ブラジルにちなむ曲とすることで少しでもリラックスしてもらいたいとの思いが込められた。
25日夜に宮殿・豊明殿で開かれる宮中晩餐では、ドレスコードが通常のタキシードや燕尾服(えんびふく)、紋付き羽織はかまから男性はダークスーツ、女性はデイドレスなどに変更された。これはブラジル側の要望に応じた特例だという。
晩餐会の招待者は、感染対策のためコロナ禍前より全体の数を減らしたものの、ブラジル側の出席者は増やした。日本側も、サッカー選手の三浦知良さんやサッカー解説者のセルジオ越後さん、歌手のマルシアさんらブラジルにゆかりがある著名人が招かれた。
料理の提供方式では、大皿料理をゲストにとってもらう形式からひと皿ずつ提供する形に変更。限られた時間の中で、「会話が中断される回数を減らし、楽しんでもらいたい」という両陛下の配慮から宮内庁が形式を変更した。昼食会では近年、日本文化を知ってもらいたいという両陛下の思いを受けて和食の前菜が提供されており、今回の晩餐会のメニューにも注目だ。
同日午前にあった両陛下と大統領夫妻との会見では、大統領へ瑠璃磁壺(つぼ)が、妻ジャンジャさんへ佐賀錦のハンドバッグが贈られた。また、儀礼叙勲として日本側から大統領は大勲位菊花大綬章に、ジャンジャさんは宝冠大綬章に叙せられた。ブラジル側からは天皇陛下へ南十字星勲章大頸飾(けいしょく)章が、皇后さまへ、リオ・ブランコ勲章大十字型章が贈られた。