トロッととろけるチーズをかぶった肉汁たっぷりのパティに、シャキシャキのレタス、みずみずしいトマトをふっくらとしたバンズで挟む。宮城県松島町のハンバーガー店「ハリーズ・ジャンクション」には看板商品がある。オーナー佐藤賢将(たかまさ)さん(40)は今月、米国のハンバーガー世界大会に出場し、日本一のハンバーガーのおいしさをアピールする。
10月23日の昼下がり、スーツ姿の職員ばかりが並ぶ県庁の一室。テーブルの上に鎮座していたのは、具材をあふれんばかりに挟み込んだハリーズ・ジャンクションの看板ハンバーガー「ハリーズバーガー」だった。
職員の一人が「思いっきりいきます」とほおばった。「とにかくおいしい」。瞬時に破顔した。職員は、佐藤さんが表敬訪問した伊藤哲也副知事だった。
伊藤副知事は「佐藤さんのおいしいハンバーガーで松島に人が集まり、観光との相乗効果になっている」と称賛した。
表敬訪問後、地元食材を積極的に使う理由を尋ねると、佐藤さんは「宮城にはおいしいものが多いので」と笑みをこぼし、地元愛をのぞかせた。近所の農家から直接仕入れることもあるという。
佐藤さんは高校卒業後、東京都内で就職し、主に飲食業界で働いた。上京の約5年後にはハンバーガー店で働き始めた。
そんな折、帰省の際に中学時代の野球部の恩師から「松島は人も少なくなって商店街も閑散としてきた」と聞いた。そこで「地元を活性化できたら」と2018年6月に松島町で店を開いた。
仙台牛のすね肉を使った牛100%のパティに、県産のレタスやトマトを挟んだハリーズバーガーは瞬く間に人気になった。
今年6月には、埼玉県であった日本一のハンバーガーを決める「ジャパンバーガーチャンピオンシップ」で優勝。予選では仙台牛とカキを使ったハンバーガー、決勝では事前の指定食材である、日ハムが開発したフォアグラの代替食品「グラフォア」とハリーズバーガーを組み合わせ、世界大会へ出場を決めた。
佐藤さんが出場するのは、今月8~12日の世界最大のフードスポーツイベント「ワールドフードチャンピオンシップス」のハンバーガー部門。日本の食材は持ち込めないが、県の伝統工芸品である雄勝石の食器や玉虫塗のグラスを使う予定だ。
初めて挑む本場・米インディアナ州の大会。予選では米国人好みのオーソドックスな味に寄せ、決勝では現地で調達するカキを煮詰めたジャムを使い、宮城らしさを表現する作戦だ。「一口食べて、おいしいってみんなが笑顔になってくれたら、それが一番」と笑顔を見せた。(岸めぐみ)