第67回宮城県吹奏楽コンクール(県吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)が1~4日、仙台銀行ホールイズミティ21(仙台市泉区)である。6地区の計120団体が出場。高校小編成、小学生の各部から、練習に打ち込む2校を紹介する。
「音出す前に、みんなもっと顔、見合って。心を一つに。その気持ちが大事だからね」
7月25日、市立新田小(仙台市宮城野区)。朝の午前7時半から始まった練習で、児童約50人に呼びかけたのは、ブラスバンド部顧問の佐藤美衣奈教諭(25)だ。
新田小のブラスバンド部は昨年まで4大会連続で東北大会に出場しており、昨年の県大会では最高賞の海鋒義美(かいほこよしみ)賞を受賞。教員2年目で、今回が指揮者デビューとなる佐藤さんにとっては「緊張が99%、ワクワクが1%」という。目標は、東北大会に5連続出場し、東日本大会にも出場することだ。
中学生の時から吹奏楽部に入り、サックス一筋。大学時代も楽団で演奏を続けた。昨年4月、幼少期から憧れていた小学校教諭になった。配属された新田小にはブラスバンド部があり、早速、昨年は副顧問、今年から顧問になった。
児童の多くは経験が浅く、佐藤さんら教員の裁量は大きい。指揮の振り方次第で、子どもたちが出す音も違う。「練習熱心で素直な子ばかり。伝えたことに対して頑張って応えようとしてくれるので、負けないよう頑張れます」とほほえむ。
日頃の練習では、音楽をどのように表現し、何を伝えたいか、みんなで話して確かめている。「息を吹けば音は出るけど、それは音楽じゃない。子どもたち全体の音や表情の変化を感じ取ってもらいたい」と話す。
佐藤さんがめざすのは、子どもたちとともに作る「音の一体感」だ。「指揮者は音は出していないけど、伝えたい気持ちは演奏者と一緒。緊張も大きいけど、子どもたちと一緒に音楽を作り上げるのが楽しみです」
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民族楽器の重厚な太鼓の音がホールに響く。部員が持つ楽器を手放し、次々と別の楽器に持ち替える。30人以内の高校小編成の部に、半分以下の人数で臨むのは、地区大会で審査員特別賞も受賞した仙台城南高(仙台市太白区)だ。
部員は10人。その半分が4月に入部した1年生だ。中心は3年の3人で、梅原恋樺さん(18)と星琴音さん(17)が部長2人体制で運営面を管理し、春木龍飛さん(17)が合奏練習でリーダーシップをとる。
部員数は毎年変動するが、昨年は20人。今年は特に少なく、楽器の運搬では苦労する場面も多いが、良いこともある。1曲のうちに楽器の持ち替えがあるため、1人が複数の楽器を演奏できるようになる。学年関係なくコミュニケーションをとり、部員同士の仲も良い。
演奏曲は毎年、その年の部員数に応じて作曲家が編集。今年はイランの英雄叙事詩をもとにした壮大な曲だ。複数の楽器が同じ旋律を奏でる「ユニゾン」で全体の音量を底上げしつつ、高音や低音の楽器でハーモニーを作ることで足りない中音域を補う。
東日本大会で銀賞を受賞した昨年に続き、上位入賞をめざす。梅原さんは「一人ひとりの技術が目立つ分、どの学校よりも頑張っている自信がある。負けないように頑張ります」と笑顔で語った。(阿部育子)