Smiley face
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父とほおを寄せ合うみなみ(右)=本人提供
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 父が家を出て行ったのは、みなみ(26)がまだ小学生の頃だった。「自由になりたい」。そんな一言を残し、姿を消した。

 3年後、父が帰ってきた。車イスに乗り、チューブにつながれて。脳幹出血だった。頭ははっきりしているが、声も出せない。

 記憶の中の父は、ちゃめっ気があり、優しかった。突然の変顔やモノマネは日常茶飯事。娘のみなみが欲しがるものは何でも買い与え、甘やかした。

 自分の心に正直な人でもあった。スピードスケート選手になると言い出して、勤めていた銀行を辞め、鹿児島代表として国体出場を果たしたこともある。

 だが、倒れてからの父は「殺してくれ」と言わんばかりによく泣きわめいた。脳の感情をつかさどる部分を損傷したせいだが、みなみは現実を受け止めきれなかった。「こんなお父さん、見たくない」

 思春期まっただ中。家族の愛に包まれたい時に、両親の仲は冷えていた。自分は邪魔な存在だと思い込んだ。

仲良し親子に戻りたいのに

 家での居場所のなさを忘れさ…

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