日本の家庭から出る食品ロスは、世帯主の年代が高いほど1人あたりの量が多く、70歳以上は29歳以下の3倍近くに上ると、立命館大と長崎大、東京大、九州大の研究チームが英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに論文を発表した。
高齢世帯は若い世代より外食が少なく自炊が多いこともあるが、野菜や果物など傷みやすい食材の購入が多く、衛生面への配慮もあって本来食べられる部分を過剰に取り除いているようだ。今後、人口減が進んでも食品ロスの総量は微減にとどまるとも分析、「世代ごとの食生活・食習慣の違いを踏まえた対策が重要」としている。
食品ロスとは「食べられるのに捨てられている食品廃棄物」。世界で生産された食料の約3分の1は消費されず、廃棄されているとする報告もある。廃棄された食品による世界全体の温室効果ガス排出量は、サプライチェーン全体で日本の年間の温室効果ガス排出量の数倍にもなり、食品ロスを減らすことは地球温暖化対策にも役立つ。
日本では食品ロスの半分近くを家庭系が占める。研究チームは、環境省や農林水産省、国立社会保障・人口問題研究所などが公表している食生活や食品ロス、人口動態にかかわる統計データをもとに、197の食品を11分類して、2015年における家庭系の食品ロスとそれによる温室効果ガス排出量の内訳を世代ごとに推計した。
全体としては、キャベツを中心とする野菜類や、バナナなどの果物が、家庭系食品ロス全体(289万トン)の57%を占めた。家庭系の食品ロスによる温室効果ガス排出量(原料生産から小売りまで)は606万トン(二酸化炭素〈CO2〉換算)。こちらは野菜類に続き、調理食品、魚介類、肉類からが多かった。個別にはお総菜や牛肉、パン(食パンを除く)が目立った。
世帯主の年齢で見ると、1人あたりの家庭系食品ロスは年代が上がるほど多くなり、70歳以上では46.0キロで、29歳以下(16.6キロ)の約2.8倍となった。高齢世帯では野菜や果物、魚介類など生鮮食品の割合が高く、おいしい部分だけを食べたり、食中毒などを心配したりして食べられる部分の過剰除去が多かった。若い世代ではつくりすぎによる「食べ残し」が多かった。消費・賞味期限切れなどによる直接廃棄(未利用)はいずれの世代でも2割程度だった。
家庭系の食品ロスによる1人…