イメージイラスト・佐藤茉優希

 その日を選んだのは「見つけ出してもらえる」と思ったからだった。

 福岡市内の団地で同居する父親(当時76)の首を絞めて殺害した罪で、無職の長男(48)が起訴された。

 2024年11月12日。家賃滞納により、自宅の明け渡しを迫られる強制執行の予定日だった。

 「応答がなかったら解錠して入ってくる。見つけ出してもらえるので」

 父親の遺体を部屋に残し、自らも命を絶とうとしたが、林道で車の中にいたところを警察に発見された。

 25年6月に福岡地裁であった裁判員裁判の供述などから、事件の経緯をたどる。

 被告は大学時代、就職活動には力を入れず、卒業後はアルバイトで収入を得ていた。

母の病死で2人暮らしに

 11年ごろからは派遣会社に登録。イベント会場を設営する日雇いの仕事をしていたという。性分に「合っている」と感じていた。

 父親との2人暮らしが始まったのは13年に母親が病死してから。

 父親は「あまりワーワーと怒…

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