「週明けまでにリポートをまとめて」「この書類、締め切りは○月○日で」――。子どもだけでなく、大人の日常にもつきものの「宿題」。さっさと済ませた方がいいとわかっていても、なかなか手につかない。一方で宿題を出す側や、提出を待つ立場の人にも、きっと心労があるに違いない。宿題を巡る悩みの根っこに何があるのか、教育評論家の尾木直樹さん(77)に相談してみた。
ギリギリセーフ、それも能力
――宿題をつい後回しにし、締めきり間際に苦労することも少なくありません。
「夏休み最終日の子ども」状態ですね。それはそれは、しんどいですね。計画性をもって進めている人に比べると、大変な苦労をされているわけですが、ある意味では、それも能力のひとつですよ。ぎりぎりになっても何とか間に合わせる。つまり、取りかかりさえすればやれる能力があるとも言えるわけですから、そこまで気にしなくていいと思います。
それに、取りかかるまでの時間に、そのほかに魅力を感じたやりたいことをやっているわけですよね。たとえ、ぼーっと寝ていたとしても、そのぼーっとする時間もまた大事です。
――その考え方、心が軽くなります。
リフレーミング(reframing)という心理学の手法です。たとえば、くよくよ考えてなかなか決断できないAさんがいるとします。Aさんはそれを気にしているかもしれません。でも「とても慎重」という見方もできる。ものごとの枠組みをとらえ直すと、欠点と思い込んでいたことが、とても素晴らしい個性になる。それはすべてのことについて言えます。
そして、ものごとは○か×かの二者択一でもありません。たとえば、「たくましい」など一般的に「男性的」とされがちな性質、「気遣いができる」など「女性的」とされがちな性質をそれぞれ列挙し、クラスの子どもたちに「自分にあてはまる項目にチェックを入れてみよう」と呼びかけると、全員が全員、「男性的」と「女性的」の両方の項目にチェックがつくんです。人は様々な面を持つことに気づくと、ものごとを二択ではなく、グラデーションとしてとらえられるようにもなります。
――尾木さん自身は宿題とどう付き合ってきましたか。
学校の宿題って、そう簡単にやる気は湧きませんよね。なかなか取りかかれないのは、自分で決めた課題ではなく、他人(先生や親)にやらされていると思うから。
記事の後半では、尾木さんが宿題をやる気になるコツや、宿題を出す立場になった時の注意点などについて語ります。
その点、うちの母は巧妙でし…