歴史小説「潮音」全4巻刊行の宮本輝さん

 宮本輝さん(78)が初めて手がけた歴史小説「潮音」(文芸春秋)が今年1月から月1冊刊行され、全4巻が完結した。幕末から明治維新を生き抜いた富山の薬売りの目を通して、歴史のうねりと人々の喜怒哀楽がみずみずしく語られる。

 1853年のペリー提督率いる黒船艦隊の来航から開国、明治維新、そして近代化へ向かう激動期。越中富山から薩摩藩へ派遣された売薬行商人、川上弥一らは蝦夷地や琉球、清国とつながる密貿易の核心に迫っていく。それは幕府崩壊にもかかわることになる。

 密貿易のさわりをテレビでたまたま見て、興味をそそられたのが執筆のきっかけだ。宮本さんは小学生のころ、富山に暮らしたことがある。それに、富山の薬売りが年2回家を訪ねてくると、紙風船をもらえるのが子ども心に楽しみだった。「富山の売薬さんへの郷愁がありましたね。あの売薬さんが倒幕の歴史にかかわりがある?」と。

 武士の目線で語られがちな歴…

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