金沢城や兼六園などの名所や古い街並みが残り、歴史と文化の香り高い石川県。だが、お隣の富山や福井にあって、石川にないのが「国宝の建造物」だ。そんななか、国重要文化財の建造物10棟を抱え、「最も国宝に近い」とされているのが、羽咋市にある妙成寺(みょうじょうじ)だ。晩秋のある日、名刹(めいさつ)を訪ねてみた。
金沢から「のと里山海道」を走ること約1時間。風光明媚(めいび)な千里浜や気多大社を過ぎると、田園風景のなかに塔の屋根が見えてくる。
寺に着き、二王門(国重文)をくぐると、眼前に現れるのが優美な姿の五重塔(同)だ。「高さは約34メートルと五重塔としてはそう大きくありませんが、丘陵の上に建ち、実際よりも高く見えます」と大森教生執事。
妙成寺の現在の伽藍(がらん)の多くが建てられたのが江戸時代初頭だ。
日蓮聖人の孫弟子の日像上人が1294年に開山した北陸最初の法華道場。その古刹(こさつ)を熱心に保護したのが加賀藩祖・前田利家の側室で、2代藩主(3代当主)・利常の母の寿福院だ。妙成寺を菩提(ぼだい)所と定めると、次々と諸堂の整備にとりかかった。
二王門の広場を右に見ると…