富山中部の草切琢吾主将=2025年7月19日、県営富山野球場、前多健吾撮影

(19日、第107回全国高校野球選手権富山大会3回戦 富山第一10―0富山中部=6回コールド)

 富山中部の草切琢吾主将(3年)は、ピンチの場面で何度も内野で声を張り上げ、チームを鼓舞した。だが、相手打線の勢いは止まらず、六回コールド。「打球がすごかった。これまでのチームより2段階、上だった」

 主将としてチームを引っ張る一方で、個人的な思いを抱いて大会に臨んだ。同校野球部出身で兄の駿吾さん(富山大医学部3年)の存在だ。野球を始めたのも兄への憧れが大きかった。

 ただ、2020年、駿吾さんが高校3年の時、新型コロナウイルスの影響で甲子園大会が中止となり、富山も独自大会で実施された。

 試合はあったが、応援は制限される異例の大会。草切選手は「夏は、家族や友達、吹奏楽などたくさんの人の声援の中で試合をするものだと思っていた」。しかし、兄はその経験ができなかった。だから、「不完全燃焼だったと思う。その分、頑張ろうと思った」。試合前日、兄からはLINEで「悔いが残らないようにな」とメッセージが届いた。

 初戦の魚津工戦に3番二塁手で先発出場。3打数3安打2四死球と全打席で出塁、盗塁も三つ決めた。「満足いく結果だった」

 この日、相手は第1シード・富山第一。小中学校時代のチームメートが複数いた。「粘ってロースコアに持ち込み、最後は集中力で勝ちたい」。応援席にいる兄に勝利を届けたかったが、2打数無安打に終わり、すべてに圧倒された。敗戦に涙ぐみながら、「相手の打力がすごかった。でも、兄には野球を楽しむ姿は見せられたと思う」。

 野球は高校で一区切りにするつもりだ。明日からは経済を学ぶために国立大進学を目指して机に向かう。

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