「モリヤマ、ナゴヤ、アイチ、ジャパン!」
出身地がコールされ、会場は大歓声に包まれる。お辞儀してはにかむ、身長211センチの父と188センチの子。
バスケットボール元日本代表の富永啓之さん(50)は3月、米ネブラスカ大に所属する息子の啓生(23)の試合を見るために渡米した。
1万5千人が埋めたホームアリーナ。啓生はチーム最多18得点と躍動した。本拠最終戦となったその日は、最上級生の選手と家族をたたえるセレモニーが行われた。
総立ちのファンの拍手と祝福で周りの声が聞こえない。名古屋市から9700キロ離れた米中西部の自然豊かな田舎町で、息子はヒーローになっていた。
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テキサスの短大からNCAA(全米大学体育協会)1部のネブラスカ大に編入して3年目。エースと認められた啓生は今季、チームトップの1試合平均15・1得点を重ね、ネブラスカ大を「マーチ・マッドネス」(3月の熱狂)と呼ばれる全米大学選手権出場に導いた。
全国から68校しか出られない米スポーツ界屈指の祭典。期間中はNBAもしのぐ注目を集めるトーナメントに、同大が出るのは10年ぶりの快挙だった。
町を歩いても、車に乗っていても、レストランで食事をしていても、「おまえは誇りだ」「よく来てくれた」と声をかけられる。「日本では想像できないほどの熱量と温かさで応援してくれた」と啓之さん。
愛される理由があった。
普段穏やかな啓生は、コート…