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乳幼児相談に来た生後3カ月の赤ちゃんをケアする助産師。相談から産後ケアにつながることもあるという=岐阜県多治見市
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 助産師ら専門職が出産後まもない女性の心身をサポートしたり、子育て相談に乗ったりする「産後ケア」。5年前の法改正を機に約9割の自治体で導入されるようになったが、利用率は全国の分娩(ぶんべん)件数の約1割にとどまっている。何が利用の壁になっているのか。

努力義務化、増えた実施自治体

 産後ケアは、核家族化や高齢出産の増加で親のサポートが受けにくくなったことなどを背景に、女性の孤立や産後うつを防ごうと、2019年の母子保健法の改正で21年度から市区町村の努力義務となり、実施する自治体が拡大。23年度は約9割にあたる1547自治体で実施され、14年度の29自治体から50倍超に増えた。

 こども家庭庁によると、産後ケアには「宿泊型」、日帰りの「デイサービス型」、家庭に訪問する「アウトリーチ型」の3種類がある。

 実施する自治体が増える一方、利用率は伸び悩んでいる。国の調査によると、利用者は全国の分娩件数の10.9%(22年度実績)にとどまっている。

 同庁は昨年6月、産後ケアの対象者について「心身の不調または育児に不安がある人」「特に支援が必要な人」から「産後ケアを必要とする人」と表現を変え、利用促進を図っている。

「久々にゆっくり眠れた」

 「利用してみてすごく良かった」

 岐阜県多治見市の女性(38)は9月に3泊4日で宿泊型の産後ケアを利用した。

 多治見市は4月に宿泊型を新たに始め、女性は母親の紹介で制度を知った。

 8月に初産で長男を産んだが、出産時に大量出血があり10日間入院。退院後は歩くのもつらい状況だった。夫の育児休業が9月上旬までで不安もあった。夜間授乳で寝不足も続いていたため、利用を決めたという。

 宿泊したのは多治見市が契約する名古屋市内にある産婦人科のクリニックだ。

 初日の朝、育児の悩みやどう過ごしたいかなどの聞き取りを受け、母乳についての相談や休息を取りたいとの希望を伝えた。

 日中は、授乳時以外は子どもを預けて個室でテレビを見たり、食事をゆっくりとったりするなどして過ごした。夜間も子どもを預けることができ、2日目の朝起きた時は「久々にゆっくり眠れた」と感じた。おむつを買うために外出した時も「一人で外に出るのは久しぶり」とリフレッシュできたという。利用料金は多治見市の補助が出るため3泊4日(食事付き)で4530円だった。

一番の壁は自分の中の…

 一方、利用を決めるまでにはためらいもあったという。

 一番の壁は、自分の中の「子…

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