Smiley face
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位牌に記された年齢や戦死した場所を見る石ケ森桂山住職=2024年8月3日午後2時2分、岩手県山田町の竜泉寺、東野真和撮影
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 岩手県山田町織笠の竜泉寺には、太平洋戦争を中心に過去の戦争で若くして亡くなった108人の遺影が、位牌(いはい)とともに置かれている。

 石ケ森桂山住職(51)によると、祖父で2代前の住職の故・禅道さんが1966年に位牌堂を建てた時、戦死者を忘れず戦争を繰り返さないためにと、遺族に遺影を持ち寄ってもらい、他の位牌とは別に「英霊殿」を設けた。「ちゃんと扱ってあげたいという思いが地域にあり、自然発生的にできたのでは」と桂山住職は推測する。

 本堂の正面左にあり、統一された黒い位牌の表に戒名、俗名、年齢が記され、裏には「奉天」「サイパン島」など戦死した場所と日付が記されている。軍服を着て笑顔で写る遺影を見ながら、桂山住職は「エリートで体格に恵まれた青年が戦争にとられた。どれだけの人材が奪われたか。馬鹿なことをした」と悔しがる。

 「東日本大震災で、家族の写真や記録が津波に流されてしまった人も多く、ここに残った写真は貴重」。桂山住職は老朽化した本堂の改修を考えている。それを機に、写真にカラー加工を施してデジタル化するなど、より目に触れやすい工夫ができないか構想しているという。(東野真和)

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