照りつける太陽が脳天を焼き、水面の反射光からは逃げようもない。真夏の田仕事命がけ。動けるのは夜明け直後のわずかな時間だけだ。よって午前2時起きなんだが、これはもはや早起きではない。夜更かしである。
そんなでもわたしが米百姓を続けるのは、銀シャリを腹いっぱい食いたいのもあるが、体を酷使する労働に、もの書きとはまた違う妖しい快楽を発見したからだ。田回りのあと、もどかしく野良着を脱ぎ捨てる。肌にねっとりからむ汗を、冷水シャワーで流す。びくっとする冷たさが甘美である。「今日もおれはがんばった」
泥田ではいつも、お気に入りの歌とともにある。頭の中に旋律が響くときもあるし、口に出して歌っているときもある。ワークソング(労働歌)とは、これだろう。
シンガー・ソングライターの寺尾紗穂が新アルバム「わたしの好きな労働歌」を出した。鉱山、子守、紡績工場、家事労働……。働く人の口の端(は)に上ったワークソングを、自由な意匠で歌っている。
じつにいろんな労働がある…