Smiley face
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男性が測量の現場で使ったメモ帳を手にする長女。数字がびっしりと書き込まれていた=2025年5月12日、千葉県八街市、大滝哲彰撮影
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 建設会社の専務取締役だった男性(当時66)が急性心筋梗塞(こうそく)で亡くなり、労災と認められていたことがわかった。取締役は一般に労働者を雇う「使用者」とされ、労働関係法の保護が及ばないが、実態の検討によって労働者と言えるかどうか(労働者性)の壁を越えた。

 遺族が賠償を求めた訴訟も会社側が解決金を払って和解した。

 男性は千葉県成田市にある従業員約40人の建設会社でナンバー2の専務を務め、2017年5月に亡くなった。東金労働基準監督署の調査によると、週休は1日で主に現場監督として働き、直近2~6カ月の残業は月平均100時間を超え、「過労死ライン」の80時間を上回っていた。

 労働者性が問題になったが、労基署は工事の受注や人員配置などを決める「業務執行権」は代表取締役にあり、男性にはなかったと指摘。実質は代表取締役の指揮のもとで働く労働者だったとして、18年9月に労災と認めた。

 遺族はこの認定をもとに23年4月、同社や代表に約5千万円の賠償を求めて千葉地裁佐倉支部に提訴した。同社側と昨年8月、和解した。

壁はあった 泣き寝入りしなかった

 異例の労災認定には三つのポイントがあった。

 まず、遺族が労働者性の「壁」を前に泣き寝入りしなかったことだ。

 「難しいですね。役員なので…

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