藤井聡太名人(22)への挑戦権を争う実力トップ10のA級棋士であると同時に、将棋界の舵(かじ)取りを担う日本将棋連盟の常務理事。この「二刀流」に糸谷哲郎八段(36)は今年度から挑む。ただし、理事の仕事のため将棋の研究時間が減ることは必至で、周囲からは「火中の栗を拾ったのでは」と懸念する声も。だが、本人は「自分を育ててくれた関西の将棋界には恩義がある。その恩を返したい」と熱く語る。
――高校3年だった2006年春、棋士になると、公式戦で糸谷さんに負かされた先輩棋士が、規格外の強さに驚いて「怪物だ……」と漏らしたことから、「怪物くん」とも呼ばれるように。同年秋には若手の登竜門とされる新人王戦で優勝。棋士として対局を重ねながら受験勉強も続け、翌年春には大阪大文学部に現役合格。さらに、同大大学院で哲学を研究していた14年には初タイトルの竜王を獲得。「二刀流」を進化させ続けてきました。
「一つの道を究める」というのも素晴らしいとは思うんですが、「自分が興味を持っていることを、二つか三つ、やりながら……」というのも人間の人生としては、ある、と思っています。私は、いろいろ、やる方の人間で、いろいろ楽しみたいんです。
――優勝した新人王戦の表彰…