5月のある日曜日。高松市内の商店街で、1人の政治家の周囲を数十人が取り囲んでいた。
「淳也さん、聞いて欲しい。私はコメの卸業者だが、卸業者がもうけすぎだと言う政治家がいる。実情を伝えて欲しい」。男性が言うと、立憲民主党幹事長の小川淳也(54)はうなずいた。
別の女性も手を挙げた。「消費税減税をめぐって支持者の間で分断が進む。分断はよくない。今日は言わせて欲しくて来た」
小川はノートにメモを取る。額に浮かぶ汗をハンカチで拭きながら、一つ一つに答える。こうした対話を20年近く続けてきた。声を聴くことだけではない。自分の言葉で、納得してもらうことが欠かせないと考えている。
約1時間の集会で、やり取りした相手は8人。瞬間的に何千、何万へと拡散することもあるSNSとは対極的だ。この対話集会をデジタル技術によって、数千、数万人へと広げることができないか。4月、党として大規模な討論プラットフォーム「りっけんAI井戸端会議」を立ち上げた。
- 【連載1回目】AIが政治家に示した「声」、それは民意か誘導か 問われる民主主義
多数の声に流され、ポピュリズム(大衆迎合主義)に陥ることはないか。そんな問いに対して、小川は言う。「民意には、憤りや不安、怒りという負の感情と、良識や利他心、公共心といった正の感情の二つがある。着火しやすい負の感情をあおることをポピュリズムと定義するなら、難燃性の正の感情は健全な民主主義。AIをどちらに貢献させるのか、分岐点に立っている」
記事の最後では、AIと民主主義の関係について話すオードリー・タン氏への単独インタビュー動画も視聴できます。
一方で、AIの進化には日々…