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小児がんの研究を支える「日本小児がん研究グループ(JCCG)」

 日本小児がん研究グループ(JCCG)などは、1800人の患者が参加した小児急性リンパ性白血病の国内臨床試験の結果をまとめ、生存率が国際的に最高水準の標準治療を確立したと発表した。JCCGが発足して12月で10年。これまでに地道に研究のネットワークを広げたことが、小児がんで国内最大規模の臨床試験の結果につながった。

 研究結果は11月12日に米臨床腫瘍(しゅよう)学会誌に掲載された。

 急性リンパ性白血病は血液のがんで、子どもでは今回の臨床試験で対象になったB前駆細胞型が最も多く、年間400人が発症する。以前は不治の病でもあったが、様々な治療法が開発され、今では5年生存率は9割以上となった。

 ただ、最初の治療で、95%以上の子でほとんどの白血病細胞がなくなる「寛解」を達成するが、わずかに残った細胞を根絶するために薬などによる強力な治療も必要となる。

 強い治療をするほど、後に心臓の機能低下や神経の障害などの「晩期合併症」が出るリスクが高まる。その一方で、治療を弱めると再発率が高まる。このため、患者ごとに再発のリスクを分けて、再発と合併症をどちらも減らす治療法の開発が望まれていた。

 JCCGは、東京大と埼玉県立小児医療センターなどのグループを中心に、2012~17年にかけて、全国1800人を対象に、最適な治療法を調べる臨床試験を実施した。

 試験では、「標準」「中間」「高」に区分している再発リスクの基準を改良して用いた。その結果、標準リスク群では抗がん剤を減らすことが可能となり、一番弱い治療でも再発リスクが上がらないことを確認した。高リスク群でも予防的な放射線照射を無くし、全体として、造血幹細胞移植の対象となる患者も減らすことができた。

 合併症の死亡率も0・6%に抑えつつ、5年生存率は国際的にも最高水準の94・3%だった。

 研究代表者の埼玉県立小児医療センターの康勝好血液・腫瘍科長は「患者に大きな負担がかかる造血幹細胞移植を日本全体で減らすこともできたことは非常に大きな成果になったと思う。世界の治療の進歩にもつながるのではないか」と話す。

 東京大の加藤元博教授(小児科)は「ただ、これまでの抗がん剤だけでは生存率を改善させる限界に来ているかもしれない。頻度は少なくなっているが、再発したり合併症で命を落としたりする患者もいる」とし、今は新たな臨床試験に挑戦しているという。

 今回の臨床試験には全国144の医療機関が参加している。加藤さんは「JCCGの設立により、オールジャパンで治療開発に取り組む体制ができた」と意義を強調する。

 JCCGは14年12月に設…

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