京都市教育委員会は3日、市立小学校に通う男児が3年以上前にいじめを受け、その後に長期欠席したにもかかわらず、いじめ防止対策推進法(いじめ防止法)に基づく「重大事態」に認定しなかったとして、保護者に面会して謝罪した。今後、認定の手続きを進めて再調査する方針。市教委が過去に重大事態と認定しなかった件を一転して認定するのは初めてだという。
いじめを受けて登校できなかったとして、元男児側は元同級生2人に損害賠償を求めて京都地裁に提訴。6月26日に判決があり、同地裁はいじめの一部について不法行為と認めて15万円の支払いを命じた。
判決などによると、元男児は4~6年生だった2019~21年に元同級生に机を無断で開けられ、プリントやドリルを持ち出されたり、教材や文房具を壊されたりした。他に悪口やからかいなどもあり、一連のいじめで元男児は6年生の時には30日以上の長期欠席をしたという。
いじめ防止法では、児童・生徒の生命、心身、または財産に重大な被害を受けたり、相当の期間学校を欠席することを余儀なくされたりした疑いのある事案を重大事態と定義。重大事態が発生した場合は、文部科学省や自治体への報告が学校や学校設置者に義務づけられ、速やかに事実関係を調査して被害者側に情報提供するよう求めている。
京都市教委によると、学校からの報告で、元男児が6年生時に長期欠席をしていることは把握していた。いじめの聞き取り調査も、学校と連携して行っていた。それでも重大事態と認定しなかった理由について、「当時は、欠席理由のすべてがいじめと関係するか詰め切れなかった」(市教委生徒指導課)と説明する。
今回、元男児側の提訴などを受けて事案を見直す中で、一転して「重大事態と判断すべきだった」との見解に至った。
3日には元男児の保護者に担当者が直接会って謝罪した。市教委は今後、重大事態に改めて認定し、当時の資料や関係者への聞き取りなどによる再調査を進める。報告書を作成して被害者側に情報提供をするという。
元男児の母親は「息子は傷つき、今もその後遺症に苦しめられている。遅すぎたが、いじめが『重大事態』と認められることで気持ちに区切りはつく」と話した。母親は担当者に対して早急な対応と再発防止を要望した。(才本淳子)