フリーランスの雑誌ライターや写真家らに取引条件を明示せず、報酬を期日内に支払わなかったとして、公正取引委員会は17日、出版大手の小学館(東京都千代田区)と光文社(文京区)のフリーランス法違反を認定し、再発防止などを求める勧告を出した。同法に基づく勧告は初めて。
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公取委の発表によると、小学館は昨年12月1~31日、月刊誌や週刊誌の制作でライター、写真家、イラストレーター、ヘアメイクなどのフリーランス191人に業務委託をする際、報酬の支払期日といった取引条件を明示しなかった。また、報酬を法定の期日内に支払っていなかったという。
光文社は昨年11月1日から今年2月27日、フリーランス31人との取引で同様の違反をしていた。
フリーランスは企業などに雇用されず、1人で仕事を受注する働き方。内閣官房の2020年の調査では国内に推計462万人いる。フリーランス法はフリーランスの保護を目的とし、昨年11月に施行された。
同法では、業務の発注前に業務内容、報酬の額や支払期日などを書面やメールで明示することが発注者に義務付けられている。両社では、違反のあった取引の半数以上が口頭のみでの委託で、報酬額を明示していない事例もあったという。
報酬の支払期日、設定せず
報酬の支払期日は原則、成果物を受け取る日から「60日以内のなるべく早い日」に設定することが義務づけられ、未設定の場合は成果物を受け取った日が期日となる。両社は期日を設定しておらず、成果物を受け取ってからも報酬を支払っていなかった。光文社には、期日から約90日遅れた違反もあった。
取引条件の明示や報酬の支払いを催促したフリーランスもいたが、改善されなかったという。
小学館は約2千人、光文社は約4千人のフリーランスと取引があるという。公取委は、同様の違反がないか調査して対応するよう求めた。
同法は、取引条件の明示義務などのほか、1カ月以上にわたる業務の発注者に対し、成果物の受領拒否▽報酬の減額▽返品▽買いたたき▽不当なやり直しなど、七つの禁止行為を定める。
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小学館は17日、勧告を重く受け止めるとし、「深くおわび申し上げます」と謝罪した。社内に特別対策委員会を設置し、調査の上で対策を講じるなどとし、「全社一丸となって法令順守を徹底してまいります」とした。また、光文社は同日、「本勧告に直接関わる全ての方々をはじめ、多くの関係者に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くおわび申し上げます」と謝罪。社内手続きや業務遂行状況をモニタリングして、法令順守を徹底するなどとした。