最近、小学館の社内は、文芸作品の健闘でにわかに活気づいている。
4月発表の「本屋大賞」は、上位10作のうち3作小学館の作品が占めた。3作同時に入るのは初めてのことだった。
6月には、昨秋創刊の文芸誌「GOAT(ゴート)」の第2号を発売した。「GOAT」は英語の「Greatest of All Time」の頭文字で「史上最高」の意味だ。表紙には「小説を、心の栄養に」とうたい、定価は文芸誌では破格の510円に。創刊号は次々と版を重ね、6刷5万6千部に達した。第2号も発売から1カ月あまりで4刷5万5千部と勢いがある。
定価を提案した小学館の庄野樹(いつき)・出版局チーフプロデューサーは「こんな名前を付けるなら何か事件性を出したかった。会社には先行投資と考えてもらった」と振り返る。
創刊号にエッセーを寄せた小説家の金原ひとみさんは、500ページ超の本を「フェスみたい」と語ったという。音楽フェスにお目当てのバンドを見に行ったら、知らない出演者のいい曲が聴けたという、思いがけない出会いがあることに例えた。
庄野さんは「小説を読みに行ったら詩もあったという風に、純文やエンタメといったジャンルを超えて多くの作家さんが集まり、ある種の熱狂が生まれた。手応えは大成功」と自信を隠さない。7月24日には姉妹誌「GOAT meets」も創刊し、第2号に収まりきらなかった企画を掲載する。
出版不況のなかで、あえて小説に力を注ぐ出版社がでてきました。老舗、新興、独立系の版元に思惑を尋ねました。
小学館には小説をめぐる「成…