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【動画】 スキージャンプの小林陵侑選手が2024年4月、「世界最長」となる291mの大ジャンプを飛んだ=Red Bull Content Pool提供/榊原一生撮影

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スキージャンプの「世界最長」をめざし、滑空する小林陵侑©Dominik Angerer/Red Bull Content Pool
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 雪は溶け始めていた。

 太陽の光を受けたジャンプ台は水が染み、一部がもう崩れかけている。スキージャンプ「世界最長」への挑戦は、次の7本目が限界だった。

 小林陵侑は標高1115メートルのスタート位置につくと、小さく息を吸った。

 「この挑戦がけがで没になるか、生還して映像に残るか」

 覚悟を決め、スタートバーから手を離す。助走路の傾斜に身を委ね、加速。そして、誰も到達したことのない着地点をめざして、空へ――。

 2024年4月23、24日、アイスランド北部アークレイリの斜面を舞台に、小林はジャンプの「世界記録」に挑んだ。

全長約1キロの巨大ジャンプ台

 従来の最長記録はシュテファン・クラフト(オーストリア)が17年にマークした253・5メートル。小林の挑戦に、世界的な飲料メーカー「レッドブル」なども協力した。前例のない巨大ジャンプ台に適した山を世界中から探し出し、高低差360メートル、全長950メートルの特別な台が造られた。

 規模は1998年長野五輪(白馬村)のラージヒルの約2・5倍。助走スピードも、受ける風圧も過去のジャンプとは次元が違う。失敗してけがをすれば、選手生命に関わるかもしれない。

 「そんなリスクを負ってまでやることか」「無謀だ」

 冷ややかな反応も少なくなか…

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