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和菓子づくりの基本だとして、製菓学校で「こしあん」をつくる実習を何度もする=東京都新宿区の東京製菓学校

記者コラム「多事奏論」くらし報道部記者・長沢美津子

 夏の和菓子といえば、つるりとのどに落ちる水ようかん。くずまんじゅうはあんこが透けて、目に涼を届けてくれる。

 すぐそばにある楽しみは、畑に小豆が育って、始まるものだった。それは当たり前のことでは、もう、ない。

 国産の小豆は昨年、大のつく不作だった。記録的な夏の気温と長かった残暑が影響し、生産量は約3万トン。前年から3割近く落ちている。都内の豆問屋の社長(57)は「粒が小さく、色もよくなかった。いかに過酷だったか」と話す。

 菓子業界は不足を前年までの在庫で補うが、力のある大手の陰で、街の小さな菓子屋さんが苦労した。問屋の社長は「『小豆が買えない』と、切羽詰まった電話を何本も受けました。輸入品への切り替えを決めた人もいたでしょう」。

 国産小豆は、北海道産が本州の減少分を支えて、9割を占めている。道の十勝農業試験場の歴史は、長く夏の冷害との闘いだった。それが今年から、高温での小豆栽培の実験に取り組んでいる。育種の責任者が「まさか北海道で、という気持ち」という現実なのである。

 ご存じでしたか? なんて書…

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