政権交代のある二大政党制の国へ――。そんなかけ声で30年前に日本で政治改革が実施されたとき、モデルにされたのは英国だった。だが、実はそのあと英国では多党化が進んで二大政党制が分解したと、政治学者の近藤康史さんは指摘する。政治改革は誤算だったのか。そして、気づけば日本も多党化のもたらす課題に直面していないか。英国と日本の政党政治を見つめてきた近藤さんに聞く。
日本の現状も多党化?
――小選挙区制を採り入れて二大政党制を目指そう。そんなかけ声とともに政治改革が実施されてから30年。総選挙後の日本政治の現状はどうでしょう。
「二大政党制というよりは多党制に近い状態なのではないかと思います」
「小選挙区制は一応ありますが、野党同士が選挙区で一つにまとまる動きはありません。選挙後に協力する動きもなく、個々の野党が与党と個別交渉しようとする姿勢が目立ちます」
「これらは二大政党制下における政党の動きというよりも、多党制のドイツや多党化した英国などでのそれと重なるものです」
分解進んだ英国の二大政党制
――多党化した英国と重なるとのお話ですが、1990年代に進んだ日本の政治改革は、英国を「二大政党制のモデル」と想定しての実践だったのでは?
「そうです。日本の政治改革が目指したのは、政党間の競争があって有権者への説明責任が果たされる政治でした。安定した多数の政権が政策を実行するけれど、失敗したときは責任をとって政権交代する。それが一番典型的に成立しているとして英国の二大政党制がモデルにされたのです」
「確かに、そのころまでの英国は長い間、労働党と保守党という2大政党が小選挙区制のもと交代で政権を担う国でした。しかし、まさにその90年代前後に英国では、多党化が加速したのです。二大政党制の分解と私は呼んでいます」
――どのような分解が見られるのですか。
「労働党と保守党を合わせた…