日本の少子化はなぜ止まらないのか。1990年、前年の出生率が過去最低の「1.57ショック」が社会を揺るがし、少子化問題が大きくクローズアップされた。しかし、30年以上経ったいま、状況は悪化している。少子化を止める手立てはないのか。中央大の山田昌弘教授(家族社会学)に話を聞いた。

結婚・出産を控える若者 「貧乏になるのは嫌だ」

 ――6月に発表された人口動態統計で、2023年に生まれた日本人は過去最少、「合計特殊出生率」も1.20と過去最低だったことが分かりました。日本の少子化の要因は何だと思いますか。

 少子化の要因が「未婚化」ということは、私を含む多くの学者が何十年も前から唱えていることです。ただ、いまの若者も「老後に1人でいるのは寂しい」という思いは根本にあって、結婚への意欲が衰えているとは思いません。未婚化には結婚の経済的側面が影響していると考えます。

 ――経済的側面とはどういうことですか。

 「結婚して貧乏になるのは嫌だ」と考えるのです。私が若い頃は、結婚したら豊かになれるものだと思っていました。しかし、いまの若者たちの中には、「結婚して子どもを持って、時間的、経済的に貧しくなるのは嫌だ」と考える人たちが多く存在しています。

 例えば、親と同居している場合、親の家から出て、自分もしくは自分と配偶者の収入だけで今よりいい生活ができるかどうかと考える。そして、結婚していい暮らしができるという見通しがたつまで、結婚を先延ばしして親元で待つのです。その結果、かなりの人が先延ばししたまま中高年になります。

 ――将来にわたってリスクを回避できる見通しがないと、結婚や出産を控える若者が多いということですね。

 30~40年前の若者たちの場合、「日本経済はこの先も大丈夫」「子どもを豊かな環境で育てられる」と信じることができた。人並み以上の生活が送れるということを疑わなかったから結婚することができたのです。

 ところが、1990年代初頭…

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