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(23日、第106回全国高校野球選手権大会決勝 京都国際2―1関東第一)

 試合終了のサイレンが、甲子園球場に鳴り響く。関東第一の主将、高橋徹平(3年)は京都国際の選手をたたえると、泣き崩れる仲間の肩を引き寄せた。「最後は笑って終わろう」。最後まで勝利を信じ、応援してくれたアルプススタンドへ向かった。

 関東第一の主将で4番。その意味に向き合い続けながら、甲子園にたどり着いた。昨秋、監督に主将を任された。1年生の頃から主力だったが、「主将ってタイプじゃない」。自分も仲間もそう思っていた。

 どちらかと言えばいじられキャラで、人に指示するのは好きじゃない。小さい頃から野球をやっているけど、主将になったことはなかった。だから、言葉ではなくプレーで引っ張って行くことにした。

 4番に求められる打力を追求するために、気が済むまでバットを振った。下半身の強化で、ウェートトレーニングにも力を入れた。バーベルを床から引き上げる「デッドリフト」はチーム1で、230キロを持ち上げる。

 だが、今春の選抜大会初戦、プレーでチームの足を引っ張った。自らの悪送球などのミスから失点し、延長タイブレークで敗退。春の都大会では4回戦で修徳に完封負けし、チームはバラバラになりかけた。

 どうすれば、勝てるチームになれるのか。仲間と話し合う中で、出てきたのが「攻める守備」だった。新基準の低反発バットで打撃が振るわないなら、守備からリズムを作り「1点」を守りきる。そのために足の使い方、腰の高さまで確認し、守備練習を徹底した。

 目指した形が正しかったことは、甲子園で証明された。堅い守備で3回戦以降、ロースコアの試合を1点差で制してきた。準決勝の神村学園(鹿児島)戦の安打数は相手の半分以下のわずか3。それでも勝った。

 高橋も打撃不振に苦しみながら、守備で勝利に貢献。準々決勝の東海大相模戦では値千金の本塁打を放った。「この仲間で野球ができるのもあと少しで終わりなんだから、楽しまないと」。厳しい状況でこそ、笑顔で仲間を励まし続けた。

 学校の歴史を塗り替え、「欲もプライドも捨てて、チームのために打つ」と臨んだ初の決勝。相手バッテリーの配球が読めず、3打数無安打に抑え込まれた。1点差に迫った十回裏、「同点で自分につないでくれる」と信じていたが、前の打者で試合が終わった。

 涙を流す仲間を見て、何も思わないわけじゃない。チャンスで4番として役目を果たせなかったのも悔しい。でも、この場所で泣きたくなかった。「関東第一の野球はやりきった」と思うからだ。「負けはしたけど、最後まで楽しく最高の仲間と戦えた」。主将として、追い求めたチームは完成した。(佐野楓)

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