よそ者が入ってくるなと排除されたり、それはうちの担当じゃないとたらい回しにされたり……。ビジネスなどのシーンで避けたくても避けきれない「縄張り」問題。なぜ、いつまでも私たちを悩ませるのでしょう。経営や組織に詳しい山口周さんが、利益相反という言葉から出口を探してみようと提案します。人気の独立研究者が語る「スティーブ・ジョブズ以後」時代の方向性とは?
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世界各地で争われる「線引き」
縄張り問題と言われていま頭に浮かぶのは、たとえばウクライナ危機や東シナ海の領土問題のことです。
ある地域がどちらの勢力範囲に属するのか、本当の国境はどれか。そんな線引きをめぐって世界中で多くの争いが続いています。
縄張りって、境界線を引いて「あっち」と「こっち」を分けることです。
現実の世界は、境界が揺れ動いたり、帰属のあいまいな場所があったり、緩衝地帯や共同管理の土地があったりして、必ずしもすべてが明確に区切られているわけではありません。
でも摩擦が表面化しそうになると線引きを明確にしようとしたくなり、目の前に縄を張られてしまえば不満に思う人も出てきます。
不明確な「のりしろ」が持つ意味
明確にどちら側とも言えない場所、多様な現実をのみ込む「のりしろ」のような空間が存在することの肯定的な意味も、考えておくべきなのだと思います。
動物行動学によれば、ほかの個体や集団を排除する縄張り行動は人間以外の動物にも見られます。人間同士の関係だけでは説明できない根深いものが関係していると見るべきでしょう。
人間の歴史で言えば、土地の大きさが直線的に富の大きさに結びつく「農業」や、人口密度が増す「都市化」でどこまでが自分の領域なのかに関心が高まったことで、縄張り行動は加速されたと言えます。
私たちがふだん意識させられるもので言えば、企業や役所などあちこちで起きるセクト主義やたらい回しの問題があるでしょう。
とりわけ日本にとって重大なわけ
縄張り問題とは日本人にとっ…