給食に使われる食材の生産者らと教室で会い、話を聞いたり質問したりしてみよう――。鳥取市教育委員会が市内の小中学校で「交流給食会」を14年前から続けている。地元の農業や水産業について、見て、聞いて、食べて学ぶ授業だ。
「海のにおいがする」「うわー、でかい魚!」
鳥取市気高町の市立浜村小学校で9月25日、5年生43人が家庭科室に集まった。魚を抱えて学校を訪れたのは、鮮魚の加工販売などを手がける中村商店(鳥取市)の社員ら3人だ。
「口の中はね、こんな感じ。ザラザラしてる。これがエラ。見える?」「おー、すごーい!」「あの黒いのは内臓?」
鳥取港で水揚げされたハマチを包丁でさばく実演で、児童たちは身を乗り出すようにして、まな板の上を見つめた。
続いて質問タイムだ。「魚をさばく時、何を考えてますか?」「ゴミが海に流れて魚が減っているのは本当ですか?」。児童たちが次々と手を挙げて疑問をぶつける。
「さばく時も食べる時も感謝の気持ちが大切」「ゴミも問題だけど、クラゲがたくさん発生して魚をとるのに支障をきたす問題もあります」。一つひとつの質問に、社員が丁寧に答えていった。
中村商店で学校給食への鮮魚の提供などを担当する村上鉄平さん(47)は「たくさんの子たちに魚や海、水産業について興味や関心を持ってもらえれば」と期待する。
児童たちは理科室に移動し、鳥取港で水揚げされる魚の種類や魚に含まれる栄養素などについて説明を聞いた。桑谷颯介(そうすけ)さん(11)は「鳥取の魚のことや、給食になるまでにいろんな人が関わっていることがよく分かった。感謝して残さずに食べたい」と話した。
最後は給食の時間だ。この日のメニューは気高町産のご飯▽鳥取港で水揚げされたハマチの塩こうじ焼き▽鳥取県内産の里芋のうま煮▽鳥取県内産の野菜が入ったモズクのすまし汁▽白バラ牛乳の5品。「いつもよりおいしい」「家でも食べたい」。教室にふわっと笑顔が広がった。中村商店の社員らも児童と一緒に食べた。
交流給食会では学校側の希望をもとに、水産業者や鳥取市特産のラッキョウなど農作物の生産者らを各校に招いている。浜村小の長谷川理恵校長は「社会科の授業で農林水産業を学んでいる5年生が、教科書だけでなく、関わりのある人の言葉や姿に直接触れることができる貴重な機会」と話す。
鳥取市教委は2010年6月から交流給食会を続けている。コロナ禍では中断したが、再開した昨年度は6校で実施。今年度は7校で実施予定だ。担当者は「子どもたちが地元産の食材の良さを知り、地域の産業を大切に思う気持ちを育んでほしい」と話している。(富田祥広)