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記者会見で検査結果を説明する岡山県吉備中央町の山本雅則町長(左)=同町

 岡山県吉備中央町の円城浄水場の水から有害性が指摘される有機フッ素化合物(総称PFAS)が検出された問題で、町は28日、昨年11~12月に住民ら709人に行った血中濃度検査の結果を発表した。

 最大で1ミリリットル当たり743.1ナノグラムが検出され、平均は151.5ナノグラム。国内では健康影響に関する血中濃度の基準は設けられていないが、平均値は米国で指針とされる20ナノグラムの約7.6倍にあたる。検査を受けたうち8割を超える人が20ナノグラム以上だった。

住民ら709人の検査結果を集計

 今回データを集計した岡山大大学院の頼藤貴志教授(疫学・衛生学)は「濃度は一般集団と比べて高い結果だった。現時点での血中濃度の結果の解釈は難しいが、追跡調査で濃度の減少を確認することが重要」などと指摘した。

 米国の学術機関は、健康影響が出る恐れがあるとするPFASの指針値を7種類の合計で20ナノグラムとしている。町は円城地区の住民や希望者の計709人(2~102歳)を対象にこの7種を検査した。データは13歳以上の644人、2~12歳の65人に分けて集計。全体の平均値は151.5ナノグラムだった。

 13歳以上では、20ナノグラム以上の人は88%に上った。このうち20~99.9ナノグラムは31.2%、100~199.9ナノグラムは24.7%などと続き、500ナノグラム以上は1.2%だった。

 12歳以下でも、20ナノグラム以上が81.5%。20~99.9ナノグラムは29.2%、100~199.9ナノグラムは35.4%などと続き、400~499.9ナノグラムも1.5%いた。500ナノグラム以上はいなかった。10~19.9ナノグラムは16.9%だった。

町「健康状態との関連、明確なものはなし」

 町は「血中濃度が高い場合でも、現時点では健康状態との関連について明確なものはなく、将来的な疾病の予測も難しい」とする。検査では、肝機能や脂質、甲状腺、白血球などの数値も調べており、今後、岡山大と川崎医科大などが血中濃度と健康状態との因果関係を分析する。町は比較のため、5年後の2029年度にも改めて血液検査を行う。

 頼藤教授は「土壌調査からも想定される通り、PFOAの値が高かった。今後はPFAS濃度と脂質異常などの疾患との関連を評価したい」などとコメント。「新たな曝露(ばくろ)がなければ徐々に体外に排出されていく。町は住民への健康フォローを継続し、住民は定期的な健診を受け、症状があれば医療機関を受診することが重要だ」とした。

 山本雅則町長は「米の指針と比べると大変高い数値が出ている。健康への影響はわからないが、対象者の心配が大きくなるのは当然だと思う。今後も寄り添って少しでも不安解消に努めたい」と述べた。

2月に住民説明会実施へ

 町は結果を1月27日付で住民に郵送し、最大値が検出された人には保健師が出向いて伝え、今後も500ナノグラム以上の人には保健師が訪問して対応する。2月16日には町内で住民説明会を開催する。今後も希望者がいれば検査は可能といい、現在は昨年の日程で受けられなかった希望者158人を対象に検査を進めている。

 PFASをめぐっては、町の有識者委員会が昨年9月、町内の資材置き場に置かれていた使用済み活性炭が発生源という見解を公表している。

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