サクラナイツ・岡田紗佳(30)には、自分と姿を重ねてしまう同年代の後輩プロがいる。届けたい言葉がある。

 5年前、麻雀(マージャン)プロとしてまだ3年目だった岡田にとって、Mリーグの1年目は忘れられない日々だった。

 高校からモデルを続けてきてのMリーグ入り。「雀士」という以上に「芸能人」として見られていると感じることも多かった。

 見返したい思いと、「迷惑をかけないように」という心情。胸中はぐちゃぐちゃになっていた。

今季開幕戦に出場した岡田紗佳©ABEMA

 2019年10月31日夜、岡田は記憶から消すことができないミスをした。

 ラスを引かないことを目標に戦ってきたのに、直前の試合で初めてラスを引いていた。いつも以上に緊張の糸が張り詰める中で試合に臨んだ。

 第2試合、トップ目で迎えたオーラス1本場。相手をアガらせてもトップを維持できると思って危険な牌(はい)を切った。

 「ロン」。うまく差し込めたと思って点棒を渡した後、2着目だったパイレーツ・小林剛との「同点トップ」になったことに気がつく。

 点数計算のミスだった。

 「違うか、間違えた」と苦笑い。「勘違いしてた……」。思わず頭を抱えた。

 インタビューでは謝罪を続けた。立っているのもやっとだった。

     ◇

 Mリーガーたちの言葉は温かかった。

 同卓していた選手たちはすぐに「大丈夫だよ」と声をかけた。

 雷電・萩原聖人からは試合後「カメラの前では絶対に下を向くな。見られている意識を持て。機械でもミスするんだから人間のミスは当たり前」と言われた。

 心が軽くなった。そして、麻雀プロとしての見せる意識を学んだ。

 すぐに切り替えるには、あまりに深い傷だった。でも、この日を境に岡田の考え方は変わっていった。

サクラナイツの岡田紗佳

 「試合に臨む前に、80%の力を出せればいいと思うようになりました。人間なのでちょっとしたミスは絶対起きる。だからS級ミスだけはしないように。キャパを大きくして、とにかく丁寧に『80%』を続けています」

 キャパが大きくなるにつれ、自然と手出し、ツモ切りが見えるようになり、牌効率は考えなくても分かるようになった。

 当時のチームメートでベテランの沢崎誠からは何度も「とにかく楽しく打ってきなさい」と教え込まれた。「当時は言われても難しくて。ここ2、3年でようやくできるようになりました。教えが漢方薬のようにじわじわと効いてきている感覚です」

 岡田はこの日を「一生忘れない日」と表現する。

 「ミスを受け入れ、切り替えることが大事だと気付けた日でもあります。あの経験がいまにつながっているんだと思います」

     ◇

 つらかった1年目を語りながら、頭の中には1人のMリーガーの名前が浮かんでいた。

岡田紗佳にとってのMリーグ1年目は乗り越えなくてはならない試練であり、進化するための布石でもあった。いま、同じ道を歩んで欲しいと願う相手がいる。

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