九州の百貨店が二極化している。地方では不振から抜け出せず、経営再建を進める一方、都市部では好調が続く。専門家は百貨店は業態として「衰退期」にあるとし、地方の生き残りには抜本的な見直しが必要だと指摘する。(松本真弥)

鹿児島県内唯一の百貨店「山形屋」=2024年10月7日、鹿児島市

 10月上旬、南九州一の繁華街とも言われる鹿児島市天文館地区。レトロな外観の老舗百貨店「山形屋」から、白い紙袋を下げた客が次々と出てきた。

 鹿児島県指宿市から訪れた丸田美代子さん(78)は、幼い頃から屋上の遊園地とアイスを楽しみに幾度となく通い、自分の子どもの成人式の衣装や孫のランドセルと節目の買い物もしていたという。そんななじみ深い場所をみつめ、「ずっとこのままであってほしい」と語った。そう思いをはせるのは、山形屋が経営不振に陥っているためだ。

 山形屋単体の業績は24年2月期決算まで7年連続の最終赤字で、債務超過寸前の状況だったという。今年5月にはグループで、私的整理の一つである「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」が成立したと発表した。債権者である金融機関が事業再生計画に同意し、経営再建を進めている。

 苦境の背景として指摘されるのは、天文館地区の地盤沈下だ。

 2004年、九州新幹線の部…

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