横断幕を手に、福岡高裁に入廷する原告ら=2025年8月27日午後1時30分、福岡市中央区六本松4丁目、小勝周撮影

 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は火山活動によるリスクが高いなどとして、鹿児島県や熊本県などの住民29人が国の原子力規制委員会による設置変更許可の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が27日、福岡高裁であった。松田典浩裁判長は国の審査などに違法性はないとした一審・福岡地裁判決を支持し、原告側の訴えを退けた。

 東京電力福島第一原発の事故後に策定された新規制基準に基づく設置許可をめぐる訴訟は6地裁で7件起こされており、高裁レベルの判断は初。これまで取り消し判決が出されたのは大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐる2020年12月の大阪地裁のみで、控訴審が大阪高裁で審理中となっている。

 今回の主な争点は、新規制基準による審査で使われる「火山ガイド」や、このガイドに沿った審査の合理性だった。

 原告側は、大規模噴火について、噴火の時期や規模を的確に予測することは極めて困難で、審査基準も緩やかだと主張。半径160キロ圏内にある五つのカルデラが原発に影響を及ぼす可能性を十分小さいとした評価も不合理だったなどとして、設置許可を取り消すよう求めた。

 一方、国側は「相対的安全性」の観点から、大規模噴火の可能性が相応の根拠をもって示されない限り、安全確保の上で大規模噴火を想定していなくても許容されると反論していた。

 一審・福岡地裁は火山活動を評価するための知見について専門家の間でも確立しておらず、火山ガイドの合理性について「立証されたといえるか疑いが残る」としつつ、原子力関連法令が大規模噴火による影響を考慮することまで要求しているとは解されないと指摘。大規模噴火の可能性が根拠をもって示されているとも言えないなどとして、設置許可の違法性を認めなかった。

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