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 金沢市出身の文豪・徳田秋声(1871~1943)の記念館がオリジナル文庫の出版を続けている。川端康成も絶賛した秋声だが、絶版などで大手出版社から現在販売されている作品は数少ない。今年4月に開館20年を迎えた同館は、秋声の作品を手にとってもらおうと、これまでに15冊を復刊した。

 徳田秋(しゅう)聲(せい)記念館(金沢市東山1丁目)の学芸員・薮田由梨さん(43)は秋声の小説について、「味わいどころが難しい」と話す。ストーリーは起伏に欠け、号泣するほどの感動もない。同じ金沢市を代表する作家の一人、泉鏡花は現在、一般の書店で約40冊の書籍が販売されている一方、記念館によると、秋声の書籍は岩波文庫「あらくれ・新世帯」など4冊にとどまる。

 ノーベル文学賞作家の川端は秋声を高く評価した一人だが、秋声の文章について次のように書き残している。〈すらすらとは進まないし、注意を集めて向(むか)っていないとのみこみにくい〉

 秋声の遺作となった「縮図」…

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