西村元彦(にしむら・もとひこ) 1987年、川崎重工業に入社。発電やエンジンに関わる設計開発の経験が長く、2010年ごろから水素事業の拡大に携わる。23年に現職(エネルギーソリューション&マリンカンパニープレジデント)。

インタビュー連載「電ゲン論」

 「脱炭素社会」の実現が叫ばれるいま、あらためて「電気」をどうつくるべきなのかが問われています。原発の賛否をはじめ、議論は百出しています。各界の著名人にインタビューし、さまざまな立場から語ってもらいました。

<次世代エネルギーとしての水素>

 燃やしても温室効果ガスを出さず、燃料電池車向けに普及が進んでいます。石油や天然ガスに代わる新たな発電の燃料としても期待され、2月に閣議決定したエネルギー基本計画でも「カーボンニュートラル実現に向けた鍵」と記されました。ただ、製造から利用までのサプライチェーンづくりは初期段階にあり、利用先の拡大と導入コストの低下も課題です。

 脱炭素につながる新しいエネルギー源として、水素への注目が高まっています。ただ、国内では製造コストが高く、普及が進んでも多くを輸入に頼ることになります。水素の輸送や貯蔵技術で世界の先を行く川崎重工業の西村元彦専務執行役員に、水素社会の実現に向けた取り組みと展望を聞きました。

 ――水素は発電などに使われるガスタービンへの活用が期待されています。

 「水素が普及するにつれて、天然ガスに水素を混ぜながら使うことでエネルギー転換を進めていくことができます。一方、水素を燃料にガスタービンを回すとなると、年間で何十万トンも必要になります。それだけの水素をどこから持ってくるかを考え、確実に運べて供給できるインフラを整える必要があります。2022年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業で採択された、豪州で褐炭からガス化してつくった水素を日本に運ぶ実証事業を成功させました」

 ――この事業で世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」(タンク容量1250立方メートル)を開発・建造しました。その難しさとは。

 「陸上のタンクをそのまま積めるわけではありません。沖合で結構傾いたこともありましたし、上下の荷重、波にぶつかる振動、衝撃に耐える必要があります。ガラス繊維の強化プラスチックで、揺れに耐える強度を保ちながら、熱は伝えにくい新素材を使用しました」

 ――将来の需要を満たすには…

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