スペインの美術家ジュアン・ミロ(1893~1983)の作品約百点を集めた「ミロ展」(朝日新聞社など主催)が東京都台東区の東京都美術館で開かれている。ミロの没後、国内で最大規模となる回顧展で、連日多くの美術ファンらが足を運んでいる。3月1日の開幕以来、来場者は4月23日に10万人に達した。
新しい表現に挑戦を続けた
詩情にあふれ、色彩豊かな作品で知られるミロは同国出身のピカソと並び20世紀を代表する巨匠に数えられる。政治や社会への思いを作品に反映させながら、活動初期から90歳で亡くなるまで新しい表現に挑戦し続けた。
各時代により、その作風はがらりと変わる。展示室では、時系列で5章に分けて時代背景とともに絵画や彫刻などが紹介されている。
スペイン内戦や第2次世界大戦と重なる作品には陰鬱(いんうつ)な雰囲気が漂う。代表作「星座」シリーズは、戦禍を逃れる中での不安が細い線や怪物のようなモチーフで表現された作品だ。3点が展示され、暗い部屋に照明効果で浮かび上がるように工夫されている。
東京都美術館の高城靖之・学芸員は「これだけの規模は世界的にも貴重」と話す。今回の展示については「時代の不安感やファシズムの台頭が作品にもあらわれる」と説明し、「20世紀の絵画の流れが、彼の作品を見ればわかる」と語った。
目立つ海外からの来場者
会場では、カラフルな色使いや独創的な構図に多くの人が見入っていた。音声ガイドを聞いたり、メモをしたりする人も多く見られた。
埼玉県から訪れた公務員の横山真一さん(45)は「平面作品も破る、燃やすなどの工夫が採り入れられている。実物でこそ感じられる表現を確認できた。オブジェもポップで、形がおもしろかった。ミロは作風も手法も色々変わっていく」と感想を話した。
横浜市在住で元マンガ編集者の有馬弥生さん(69)は初期の作品である「ヤシの木のある家」に魅了された。画風の転換期らしい緻密(ちみつ)さと自由さを併せ持つと感じている。今回のミロ展は「すべて抽象的な絵画だと思っていたが、画風の変遷も分かった。ミロは『かわいいとは何か』をわかっている」と述べた。
また、目立つのが海外からの来場者の多さだ。中には、落ち着いて鑑賞するために「靴を履き替えて会場を回りたい」と申し出る人もいるという。
英国から友人と来日し、東京観光の途中で訪れたローズ・パリーさん(18)は「立体や絵などミロの多くの作品を見て、彼の歴史を見ることができた。戦争の描かれ方が印象的だった」と語った。
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会期は7月6日まで
会期は7月6日まで。休室日は月曜日(4月28日、5月5日を除く)と5月7日。午前9時半から午後5時半。金曜日は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで)。
一般は2300円、大学生・専門学校生は1300円、65歳以上は1600円、18歳以下・高校生以下は無料。