Smiley face
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17歳の時に受け取った谷川俊太郎さんからの手紙

 大阪の女子高に通っていた森由紀子さん(49)。

 高校2年生の時にイベントを企画したが、教師から許可が下りなかった。

 「いやいや、時間ないし」「みんなが興味あるわけじゃないし」

 思いを受け止めるのではなく、受け流すような態度に納得がいかなかった。

 両親との仲はよかったが、時折、否定的な言葉を使うのが嫌だった。

 今思えば、どちらも取るに足りないことだ。

 それでも当時は「どうして大人って、ああなんだろう」と、憤っていた。

 次第にあらゆることが嫌になり、「木や虫になれば、こんなに悩まなくていいのかな」と思うように。

 そんな時、国語の授業で習ったのが、谷川俊太郎さんの詩「かなしみ」だった。

    ◇

 あの青い空の波の音が聞えるあたりに

 何かとんでもないおとし物を

 僕はしてきてしまったらしい

 透明な過去の駅で

 遺失物係の前に立ったら

 僕は余計に悲しくなってしまった

    ◇

 大学を卒業したばかりの先生が、よく通るきれいな声で読み上げた詩。

 その声と組み合わさった詩の響きに、雷に打たれたような衝撃を受けた。

 空と海が重なる水平線の向こうに、遺失物係の人が立っている景色が思い浮かぶ。

 落とし物って何? どうして見つからないの?

 当時は、青年期の喪失感をうたっているとは解釈できなかったが、何かが心に響いた。

 谷川さんの「二十億光年の孤独」を購入して読み、気になった詩のページに付箋(ふせん)を貼った。

 そして、谷川さんに手紙を書いた。

 大人に対する怒りを書き連ね、こんな質問をした。

 「人間に生まれて良かったですか?」

 誰かに自分の気持ちを聞いてもらいたい。

 こんな詩を書く谷川さんなら、きっと何か答えをくれる。

 そんな思いで手紙を投函(とうかん)した。

差出人は「谷川俊太郎」

 しばらくして、自宅に1枚のはがきが届いた。

 62円切手の横に「森由紀子…

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